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突如に襲ってきた新型コロナウイルスは世界経済に致命的なダメージを与えています。経済低迷の直接な影響は消費願望の低下ですが、中国では近年、国産ブランドも急速に台頭しています。
いまの若者たちは、もはや海外ブランドに夢中にならなくなり、自分のスタイルや好みに合う国産ブランドも同じく愛用しているのです。ご存知のように、中国では長い間、外資ブランドの製品や海外製品は品質がよくて愛され、一方で国産品は「偽物が多い」「質が悪い」と思われていました。
しかし、2017年頃から、中国現地でも質が高く、かつ安価なものが数多く登場し始めました。一番分かりやすいのは、化粧品業界かもしれません。中でもオンライン発のメイクアップブランド完美日記(Perfect Diary) は、創設からわずか3年の2019年9月に、評価額10億ドル(約1060億円)以上のユニコーン企業となると、2020年4月には追加1億ドル(約106億円)を調達して評価額20億ドル(約2120億円)まで駆け上がったそうです。
(「完美日記(Perfect Diary)」TMALL旗艦店より)
今日は、その中でも特に注目されている中国のローカル飲料ブランド₋元気森林(GENKI FOREST) (以下、元気森林)をご紹介したいと思います。
こちらの国産飲料メーカーですが、誕生してからただの4年間で評価額40億元(約613億円)に達しています。2016年の設立から現在まで、元気森林の成績は、2020年5月の販売実績が人民元(約40億円)に達し、2018年の売り上げ合計を超えました。天猫TMALLの618セールでは、コカ·コーラを抜き、水飲料部門のランキング1位となり、上半期の売り上げは人民元(約122億円)を超えています。
見た目は爽やかで、一見日本メーカーの商品かと思われてしまうかもしれません。糖質ゼロ、脂質ゼロ、バランスの取れた味がその売りだそうです。
(【元気森林(GENKI FOREST)】HPより)
人気KOL李佳琦(Austin)は3月8日夜、タオバオ(TAOBAO)ライブで元気森林の新製品(ミルクティーに近い味わい)をライブで販売していたが、即完売になりました。当日、一商品だけでは15万個が売れ、微博の検索ランキングにも登場し、たちまち話題となった。
まずは、ヒット商品を打ち出すことです。元気森林の創始者はゲーム会社の出身で、昔の人気のゲーム【開心農場】を作っていたそうです。もちろん、飲料業界の経験はまったくありませんでした。だが、彼は言うには、物事の成功するにあたって、必ず【確率】が存在していると。彼らの調査では、飲料業界では2019年の市場規模の上位三つというのは、飲用水、茶飲料、炭酸飲料で、ヒット商品を作る前に、まずは「レース」を選ばないといけない、つまりどのカテゴリで競争すれば勝利の確率が大きいかということです。実際、元気森林では、売り上げ上位2商品も、気泡水(炭酸水)と燃茶(茶飲料)です。
次は、ターゲットに訴えることです。CBNData、アリババヘルス、Tmall家電が共同で発表したレポート「New Foodism」によると、健康食品の売り上げは2年連続で20%を超えるペースで成長しており、この3年間で90年代以降生まれの若い世代が健康食品などのオンライン購入割合が年々増えているそうです。(下図)「年轻人养生消费趋势报告」
若い世代は健康意識が高いですが、味わいや口当たりのど越しに至るまで妥協することはありません。炭酸水+無糖の元気森林が出現しました。
そして、人目を惹くパッケージデザインです。元気森林のパッケージデザインもその成功の鍵であり、日本語の“気”という文字の使用はを増加させ、シンプルな日本風パッケージは若者の注意を引くだけでなく、消費者をソーシャルメディアで写真を撮って拡散するのも一つの仕掛けだったのです。
QuestionMobileの「2020年新国貨崛起インサイトレポート」(国貨:中国国産品)では、90年代以降と00年代以降生まれの若い人たちは、インターネットへの依存度が高く、ミニ動画やグラフィックなどの新しいコンテンツプラットフォームの利用に熱心ということで、(近年台頭してきた中国国産ブランドのこと)がSNSを代表するニューメディアではよりターゲットにアプローチしやすいのです。
マーケティングにおいては、若者がよく利用している抖音douyin 、小紅書RED、微博WEIBO、哔哩哔哩BILIBILIなどの多接点をベースに、KOLによるライブコマースやミニ動画広告、コンテンツマーケティングなどを通じて、一気に消費者の心を掴みました。
また、中国では健康意識の高さは都市の差、都市が発達すればするほど、健康に対する意識は高い傾向があります。同じ都市内でも、所得や教育レベルが人々の健康に関する意思決定と関連しています。
現在、「元気森林」のオフライン流通ルートは、第一、第二の都市のコンビニエンスストアに集中しています。 標準化されたコンビニエンスストアは、一般的にはビジネス街のオフィスビルや中高層マンションの近くに位置していて、健康意識の高いターゲットにリーチできるチャネルを提供です。
もちろん、オンライン販売の主戦場は、ECです。一方では、より広範囲のターゲット層にアプローチでき、一方では、箱買いや定額配送などの販売施策で消費者の固定消費習慣を育成することもできます。
(元気森林Tmall天猫公式旗艦店より)
中国国内で一つの新興ブランドを成功させるためには、細分化した市場に向けた商品開発と若者を代表する新興消費者をターゲットにした販売ルートの決定、そしてそれらと合わせたメディアマーケティング戦略と、どれ一つ欠かせないですね。
近年の中国人消費者では、食事の前に、先にカロリーをチェックすることに慣れてしまっていたり、コーラを半分くらい飲んで後悔していたりと、いわゆる「健康アップグレード」が始まっています。 一方では、健康的で低糖質・低カロリーの飲み物を求めているが、一方では炭酸飲料の泡や甘みを手放したくないという中国の若者に対して、元気森林は「糖質ゼロ、脂質ゼロ、カロリーゼロ」というポジショニング、糖質代替成分が生み出す刺激的な味と甘みなど、彼らのニーズに合った選択肢を提供しました。
それでは、次回の記事もお楽しみに!