ブログ
このピンク色の子豚、みなさん知っていますか?
その名は、「ペッパピッグ」。中国語では「小猪佩奇」と呼ばれ元々は英国発のアニメの主人公です。
今年に入って中国で爆発的な人気を集め、SNSなどで次々と拡散された結果、もはや社会現象と言われるぐらいの絶大な人気を獲得しました。
「ペッパピッグ」は2015年に中国で放送が開始され、たちまち子供たちの心を鷲掴みにしました。同年10月には中国の三大動画共有サービス・愛奇芸、優酷、土豆網でも配信されるようになり、わずか一年で再生回数が100億回を超えました。現在これらの動画共有サービスでのペッパピッグの累計再生回数は450億回にも達しています。
大手企業もその人気に目を付け、ユニクロは「ペッパピッグ」と提携したベビー用Tシャツなどを発売しました。「ペッパピッグ」の版権元はさらに中国の企業と提携して、中国市場でのビジネス拡大を加速させたいとコメントしています。
そもそも、なぜイギリスのアニメキャラクターが人気IP(知的財産)に変身できたのか?中国のメディアやユーザーの自発的な情報発信とその裏に隠されているプロモーションの秘訣が、我々の中国向け施策を企画する際のヒントになるのではないかと思い、今回はこれについてお話ししたいと思っています。
本来子供向けのアニメが、なぜ『社会人』を対象としたIPになってしまったのか?
1. スタンプのバイラル拡散
2016年に微信で「小猪佩奇」のスタンプがリリースされるやいないなや、たちまち100万ダウンロードを超えたそうです。。元々中国の若者はQQや微信などでチャットをする際に、頻繁にスタンプを使う傾向があり、特に加工したスタンプを好んで使います。その後、番組や動画コンテンツにもよく活用されるようになり、さらなる拡散につながりました。
スタンプの一例
2. ミニ動画のネタ
2017年の10月から年末にかけて、幾つかの宣伝の盛り上がりがが見られます。
最初は、微博のKOLによる拡散や流行語のキーワードを中心としたミニ動画アプリでのKOLによるオリジナル動画が大量に作成され、最終的に一般ユーザーにまで広がりました。
スタンプで獲得した知名度に加えて微博やbilibiliなどでの方言吹き替えに始まる 様々なオリジナルバージョンが生まれました。
昨年の年末は折からのミニ動画ブームとも重なり、ユーザー数の拡大とともに短期間に大量のインプレッションが発生したことから、プロモーションの相乗効果を得ることができました。
3. ソーシャルタグ、日常に満足しない普通人を目覚めさせる
しかしながら、ミニ動画発信が話題になること自体は、珍しいことではありません。「ペッパピッグ」ブームでもう一つ重要なポイントは、前回もご紹介しましたtiktokから認知が広まったほかのキャラクターとの明確な違いがあることです。さらに社会現象になったもう1つの要因はなんと言っても『社会人』の中では人気になったからです。
『社会人』とは、仕事もせず、ぷらぷらしている人たちの意味です!日本では“社会人”は働いている人たちのことを言いますが、中国では働いている人たちを“上班族”といい、反対に仕事をせずにぷらぷらしている人たちを『社会人』といいます。
「ペッパピッグ」が広まった一つの特徴としては、『社会人』の間にすごく人気のキャラクターで、一般市民はもともと『社会人』を揶揄する風潮があるので、たとえば「ペッパピッグ」の偽物の時計をつけた『社会人』がいましたら、“あ、さすが社会人!とみんなで冗談を言ったり、突っこんだりしています。 もちろん、『社会人』の定義は人それぞれですが、ミニ動画のユーザーたちにとって『社会人』に触れることは、ただの『平凡な日常からの脱出』、いわば若者のストレス解消方法の一つにもなっていたようです。 そんな背景の中、『社会人』と一対であるキャラクターをいじってみたり、大げさに演出したりすることが、次第に流行になったのではないかと思います。 キャラクターの刺青(洗えるやつ)や形の変わった偽物の時計を身につけることで、『社会人』を装う、このギャップのある表現は、若者の中で大変人気を博しました。
「ペッパピッグ」の腕時計。これは装飾品で時計の機能は一切ありません。
4. ブランドも参入、一般人クリエイターの再創作
すでに社会現象となった「ペッパピッグ」ですが、当然各ブランドからのタイアップの誘いは絶えません。たとえば先日、ユニクロも「ペッパピッグ」とのオフィシャルタイアップで作成した子供向けのパジャマを発売しました。
ユニクロオフィシャル微博での告知記事
このような背景の中、一般のクリエイターたちは、それぞれが勝手に他のブランドとのタイアップの夢を見始めました。ネット上では、あるユーザーがシャネルやナイキ、アディダス、シュプリーム、Vansなどのブランドがペッパピッグ関連の商品を発売したと「想定」した画像を投稿したところ、多くのネットユーザーから「まったく違和感なし」と好評を得ました。
想定したタイアップ画像
今回の社会現象は、『社会人』という独自なタグとセットになったことに加えて若者のインサイトに刺さったこと、ソーシャルメディアが活用されたことにより、人気キャラクターが誕生することになりました。
これらの要素をうまく組み合わせるブランドやプロモーション案件が今年の人気KOL(網紅)になるのではないかと、私は思っています。
これからもどんどん新しいものがでてくると思います。みなさん、楽しみに待ちましょう!
最後までお読みいただきありがとうございました。